P2Pはコンテンツホルダーの悪魔となるのか味方となるのか

音楽業界や映像業界は、P2Pの違法ファイル交換にずっと悩まされ続けてきた。KaZaaや国内産のWinMXやWinnyなども生きているが、現在のP2Pの大勢力はLimewireとBitTorrentだ。

P2Pソフトの厄介な点は、中央サーバを必要としない方式なので、ソフトの開発が完全に中止されても、利用者がそれなりにいる限りサービス利用を完全に消滅させることが困難な所である。さらにクラック版として開発者非公認の亜流バージョンが多数生まれ、生き長らえたりもする。かなりタフであり凄まじい生命力を持つ。

ただ、大抵のP2Pは利用者が多い程、求めるコンテンツ保有者が多い程、早くダウンロードできる仕組みであるから、利用者が減ると、P2Pの使い勝手は、相当落ちる。また「利用者減＝P2Pネットワーク内のライブラリー総数減」であるから、やはりP2Pの魅力は落ちる。そうなった時に、P2P利用者は、自然と、次の新しい利用者が多いP2Pに移動していくという流れ。

＊物々交換重視タイプのP2Pもある。いいもの(大抵違法物)を手に入れるには、自分も、それなりに、いいもの(大抵違法物)を持っていないといけない。自分のコンテンツライブラリー(大抵違法物)がそれなりに充実していないと、他のピアに相手にさえしてもらえない訳である。

それが永遠と続いてきた。その度に、コンテンツホルダーはP2P開発会社や悪質とされるユーザーを訴訟で攻撃するなど、あの手この手で戦い続けてきた。倒しても倒してもきりがない。

今までは全くの悪魔扱いであったP2Pも大手コンテンツホルダー側に受け入れられる合法的な著作権コンテンツのダウンロードとストリーミングサービスの可能性が生まれてきている。それが、最近、メディアコングロマリット大手のViacomと提携したJoostのストリーミング動画配信と前述のBitTottentレンタルダウンロードストアである。

＊Napsterもかっての違法ファイルダウンロードサービスから、現在は、サブスクリプションサービスを基本とする合法的サービスに完全に生まれ変わっている。

今まではP2Pの中に流れるコンテンツが違法ファイルばかりであった訳だが、P2Pというコンテンツ流通の仕組み自体には、罪がない。それどころか、BitTorrentのように人気コンテンツ程、ダウンロードスピードやストリーミング配信スピードが早くなるという、なかなか画期的なメリットもある。

JoostとBitTottentレンタルダウンロードストアがP2Pのダークサイドな暗黒面を払拭できる素晴らしい合法的サービスになることを願いたい。

ただ、ユーザー自体は、コンテンツの量と質、画質の良さ、ダウンロードスピードやストリーミング配信スピード、操作性の高さ、サービスの利便性が高いかどうか、価格面が妥当かどうかを重視するだろう。あまり、コンテンツ配信システムがP2Pであるかどうかを意識したり、それをサービスの選択理由にすることはないだろう。

P2Pによって、コンテンツ配信コストが大幅に低減でき、その分、コンテンツ視聴料を大幅に安くできるといったメリット(Joostは広告収入型動画配信なので無料)、より高品質の画質が提供できる(動画視聴体験の相当大幅な向上)といったメリットが生まれるならば、「視聴者増加→コンテンツホルダーがより多くのコンテンツを提供しコンテンツ充実→さらに視聴者増加」といった好循環サイクルがJoostとBitTottentレンタルダウンロードストアに生まれるかもしれない。いずれにしても大変な仕事だ。

「E相棒」内関連記事
米国メディア大手Viacomがインターネットテレビサービスを提供する「Joost」とコンテンツ提携

You Tube等大物CGMと大物コンテンツホルダーの激しい提携交渉

アップル、アマゾン、ウォルマート、大物が揃いだす、米国の映画やテレビ番組のネット経由のビデオ動画ダウンロード販売サービスが過熱