2007
テレビとは本質的にやすらぎと気軽さを与えてくれる娯楽の王様である。そこには緊張感やプレッシャーや不安などは大抵存在しない。比べるとPCは、極めて仕事や能動的な作業と関連づけやすいものである。
日本においては、PCはすでに世帯普及率が60%を超え、2台3台持っていることも珍しくないレベルまで急速に普及した。しかし、テレビの普及率は次元が違う。テレビはほとんどすべての家庭に普及しており、実際、大抵の家庭はテレビを2台3台所有している。あまりにもテレビは普及しているので、テレビ自体がない、全くテレビ番組を見ないという人を捜す方がはるかに難しい。
60%の普及率のPCによってでも、大抵の人は、既存のビジネスのあり方、個人の趣味娯楽、日常生活そのものが大きく変化してきたことを実感できるであろう。さて、それでは、現在恐ろしいほど日常生活に定着しているテレビに今後何か大きな変化が起きるとしたら、皆さんは、一体どう思うだろうか?
まさに今、現在、その大きな変化が起きようとしているのである。その大きな変化の正体とは、テレビがインタラクティブ(双方向)になるということである。
私たちが現在まで長い間、日常的に利用してきたテレビ、ステレオ、冷蔵庫など多くの「家電製品」と急速の普及を遂げた「PC」において最も大きく異なる特質は、高度なインタラクティブ性である。PCは高度なインタラクティブ性を有するがゆえに概してPCの前では、私たちは、高い関与が要求されることが多い。今までの家電製品では、利用者にPCのような高い関与や複雑な操作を要求することはほとんどなかった。
むしろ複雑な操作が要求される家電製品は出来損ないとさえ考えられている。大抵の家電製品は、誰にでも簡単に使えるということが重要視されてきた。
家電製品においては、私たちがテクノロジーに歩み寄るのではなく、テクノロジーが常に私たちに歩み寄ってきたのである。当然、テレビがどんなに高度化しようが、テレビを見るために何か特別な知識や技術が要求されることなどはほとんどない。
このような家電製品の王様であるテレビがまるでPCのようにインタラクティブに変化するとは一体どういうことなのだろうか?はたしてその変化は必然的なことなのだろうか?一体何がどのような順序で起こるのであろうか?
誰もが毎日、当たり前のように利用しているテレビが大きく変化することによって、視聴者のライフスタイルは一体どのように変わっていくのであろうか?視聴者はどの程度その変化を快く受け入れるのであろうか?
またビジネスという視点で見た時、テレビの変化の中で既存のビジネス構造がどのように変化し、新しくどのようなビジネス機会が生まれてくるのであろうか?
これらの多数の疑問点に答えていく前にまずは“準備体操”として、「テレビがインタラクティブに変化するとは一体どういうことなのか」を3つの分かりやすい具体的な事例を通じて話を進めていこうと思う。興味深い3つの事例を通じて今後のテレビに訪れる新しい変化の胎動と雰囲気に触れることができるだろう。