2007
HDD&DVDレコーダーを中心にデジタルビデオレコーダー(DVR)が売れに売れている。家電メーカーにとってはうれしい話だが、民放局にとって耳障りが悪い話かもしれない。というのもDVRによってタイムシフト視聴が一般的になり、加えて広告をスキップされる可能性も高まるからである。
言うまでも無く各民放局は広告収入モデルで成り立っている。広告を見てもらうことで商売が成り立っているのである。そのためDVRによって広告をスキップして番組だけを視聴するという行為は、番組を盗み見ている行為と言えるかもしれないのだ。
今後、日本でもDVRが普及するにつれて、広告スキップ問題は民放にとって重要な課題となるだろう。
さてDVRがない家庭のことを想像してみよう。もしくは自分のテレビ視聴傾向を振り返ってもみるのでも良い。はたしてDVRがない場合どれくらいテレビ広告を見ているものだろうか?
広告の間にトイレに行ったり、何らかの用事を済ましたりすることはないだろうか?もしくは、広告の間に他のチャンネルへガチャガチャ変えていたりはしないだとうか(チャンネルザッピング)?おそらく大抵誰でも見に覚えがある行為だろう。そしてこれらの行為をしている間は、広告を一切見ていないはずである。
比べてDVRによる広告スキップ中でも広告を超高速で見てはいるはずである(やや屁理屈っぽいが・・)。そのため広告スキップ中におや?と思えば、スキップをやめて広告をあらためてじっくり見直すことは、非常に良くあるのだ。
つまり広告スキップが自由な環境下でも、広告を見てもらえるチャンスはかなりあるのだ。チャンネルザッピングや用事を済ますことで広告を完全に回避されるよりも、かなりましに思えてくるのだ。
おそらく、もともと広告をしっかりと良く見るタイプの人は、DVRによる広告スキップをそれほど利用しないのではないだろうか?逆に言えばDVRで広告を頻繁にスキップするタイプの人は、もともとDVRがなくてもチャンネルザッピングなどで広告を見ていないのではないか?と考えることもできるのだ。
重要な課題は柔軟かつ多面的に思考することが大切である。今後もDVRユーザーの広告視聴行為を現実的かつ本質的に議論していきたい。
2007
読者の方には、すでにHDD内臓型のDVDレコーダーを所有している人も多いかもしれない。テレビ視聴を拡張するVCR(ビデオカセットレコーダー)は、テレビ同様にほとんどの家庭が所有しているだろう。DVR(デジタルビデオレコーダー)とは一般的にはHDD内臓のテレビ番組をデジタル方式で録画再生するデバイスのことを指す。
DVRの一般的なメリットとしては
・番組を録画するためにわざわざリムーバブルメディアを必要としない。すなわちビデオテープやDVDを購入したりする必要はない。誰でも経験していると思われるビデオテープやDVDを買い忘れたから番組を録画できなかったという失敗はなくなる。また、ビデオテープを保存する場所は必要なくなる。
・EPG(電子プログラマガイド)によって好きな番組を簡単に見つけ出し、ワンタッチで番組を録画予約できる。EPGで簡単に番組を見つけ出し録画予約し、HDDにどんどん蓄積していくテレビ番組視聴のメリットを理解した人は、もうDVRを手放せなくなるだろう。
・視聴中の番組をどこでも一時停止/一時停止した所から再スタートできる。すなわち、番組を1分たりとも見のがしたくないのでトイレに行けない(大抵の人は広告の時間が来るまで我慢することが多いだろう)ということはなくなる。いつでも現在見ている番組をストップ(一時停止)し、用を済ました後、休止した所から再生できる。
・複数のチューナー搭載型DVRの場合、2番組以上の同時録画が可能。同時間に見たい番組が複数重なった場合、皆さんは、一体どうするでしょうか?おそらく大抵の人はリモコンのチャンネルボタンで番組を頻繁に切り替えることで忙しいテレビ視聴時間となってしまうでしょう。最悪は番組をじっくり見た気がしないかもしれない。
これらの機能に加えてDVR自体はどんどん多機能化し続けている。
DVRの持つ機能は既存のVCRなどと比べてかなり便利そうだとなんとなくは理解できたのではないだろうか?
テレビがインタラクティブになる世界とは、DVRのようなテレビ視聴をインタラクティブな方向に拡張する周辺機器(エンハンサーデバイス)やネットワークデバイスによってもたらされる新しいサービスを含む。
インタラクティブテレビジョンとは何か?
さて、3つの具体的な事例を見てなんとなくテレビがインタラクティブに変化することの真意が分かってきたのではないだろうか?
インタラクティブテレビジョンとは、視聴者とテレビ番組・その他の様々なコンテンツとサービスがテレビスクリーン上を通じて双方向にやりとりされるようになり、視聴者が単なる受動的かつ低関与な存在からより能動的かつ高関与なテレビサービス利用者へと変革していくためのすべてのプロセスと一連の活動を指し示している。
インタラクティブテレビジョンの世界とは、3つの事例でもあったように
・ユーザーがますますテレビ視聴を自由自在にコントロールできるようになる
・テレビ番組自体が視聴者参加型双方向サービスとしてますます魅力的になる
・テレビが多数の人たちがやりとりする新しいコミュニケーションの場になる
・テレビ番組の中で使われている商品を簡単な操作で購入することができる
・家庭内の様々なデジタル機器とテレビがつながることで新しい体験価値が創出される
といった既存のテレビサービスの枠組みでは考えられなかった画期的な新しいサービスが続々と生まれてくる創造的かつダイナミックな世界である。
すなわち、インタラクティブテレビジョンビジネスとは、テレビ番組以外の新しいテレビの楽しみ方と使い方を創造していくこと、テレビ番組自体、視聴環境スタイル自体をますます魅力的に革新していこうという試み全般を指すものなのである。
2007
現時点でもテレビはテレビ番組を見るためだけのものではない。レンタルビデオから借りてきたDVD、もしくは自分で購入したDVDやビデオを見たり、プレイステーションとつないでゲームを満喫している人も沢山いるだろう。インタラクティブなテレビの世界では、DVDやゲームソフトといったパッケージ化されたサービスを満喫するだけではなくなる。
読者の中には宅配ピザを電話で注文したことがある人は沢山いるだろう。おそらく、読者の中にはPCでのインターネット利用を通じて、宅配ピザを注文したことがある人もいるかもしれない。
インタラクティブなテレビの世界では、テレビで好きな時に“簡単なリモコン操作”でピザを注文することができるようになる。実は、英国のサテライトプラットフォームプロバイダーのBritish SKY Broadcasting(B SKY B)のSKY Digital上で宅配ピザを注文するのはすでに大人気サービスになっているのである。英国のDomino's Pizzaのテレビ上での注文は、すでにインターネットサイト経由の注文を超えているのである。
インタラクティブなテレビの世界ではテレビが新しい宅配とショッピングの場になるという可能性を見い出せる。すでにテレビショッピング経験者であったり、PCで楽天等インターネットショッピングサイトを利用した経験がある人ならテレビが新しいショッピングの場になるという概念は何も驚くことなくスムーズに理解できる概念かもしれない。
2)英国人気リアリティ番組のBIG BROTHER
インタラクティブなテレビの世界では、既存のテレビ番組は一体どう変わるのだろうか?
これも有名な事例で紹介しておこう。日本でも人気があったサバイバーという番組を皆さんは御存じであろうか。サバイバーとは無人島で素人の男女が毎週課題をクリアしながら共同生活をし、毎週投票で脱落者を1人ずつ決めていき、最後の残った1人が勝者となる番組である。
この手の素人の生活にフォーカスを当てた番組や素人を積極的に活用したバラエティ番組や報道番組のことを通称“リアリティTV(番組)”と呼ぶ。
英国で現在大人気のBIG BROTHERもかなりサバイバーに近いテイストを持つリアリティTVである。サバイバーでは素人の共同生活の舞台が無人島であったが、BIG BROTHERでは共同生活の舞台が複数の部屋を持つ一般的な住宅に変わったものと考えれば良いだろう。住宅の各スポットにはテレビカメラが仕込まれており、各部屋の生活を覗き見できるようになっている。
サバイバー同様に毎週、参加者全員が共同で取り組む課題が与えられ、脱落者が1人ずつ投票で決められ、最後まで残った1人が勝者であるのも同じコンセプトである。
BIG BROTHERが大人気になったのは、興味深い番組コンセプトに加えて、“番組の魅力
をさらに高めるインタラクティブな仕組み”が提供されたことが大きい。
視聴者は簡単なリモコン操作で
・毎週の脱落者を選ぶ投票に参加できる。
・マルチスクリーンメニュー:各部屋のビデオ映像を自由に選んで視聴できる。自由に映像を切り替えられる。
・参加者の詳細なプロフイールや前回までのストーリー概要を閲覧できる。
・番組に関するトリビアなクイズに参加できる。
といった様々なインタラクティブサービスが提供されたのである。
2007
テレビとは本質的にやすらぎと気軽さを与えてくれる娯楽の王様である。そこには緊張感やプレッシャーや不安などは大抵存在しない。比べるとPCは、極めて仕事や能動的な作業と関連づけやすいものである。
日本においては、PCはすでに世帯普及率が60%を超え、2台3台持っていることも珍しくないレベルまで急速に普及した。しかし、テレビの普及率は次元が違う。テレビはほとんどすべての家庭に普及しており、実際、大抵の家庭はテレビを2台3台所有している。あまりにもテレビは普及しているので、テレビ自体がない、全くテレビ番組を見ないという人を捜す方がはるかに難しい。
60%の普及率のPCによってでも、大抵の人は、既存のビジネスのあり方、個人の趣味娯楽、日常生活そのものが大きく変化してきたことを実感できるであろう。さて、それでは、現在恐ろしいほど日常生活に定着しているテレビに今後何か大きな変化が起きるとしたら、皆さんは、一体どう思うだろうか?
まさに今、現在、その大きな変化が起きようとしているのである。その大きな変化の正体とは、テレビがインタラクティブ(双方向)になるということである。
私たちが現在まで長い間、日常的に利用してきたテレビ、ステレオ、冷蔵庫など多くの「家電製品」と急速の普及を遂げた「PC」において最も大きく異なる特質は、高度なインタラクティブ性である。PCは高度なインタラクティブ性を有するがゆえに概してPCの前では、私たちは、高い関与が要求されることが多い。今までの家電製品では、利用者にPCのような高い関与や複雑な操作を要求することはほとんどなかった。
むしろ複雑な操作が要求される家電製品は出来損ないとさえ考えられている。大抵の家電製品は、誰にでも簡単に使えるということが重要視されてきた。
家電製品においては、私たちがテクノロジーに歩み寄るのではなく、テクノロジーが常に私たちに歩み寄ってきたのである。当然、テレビがどんなに高度化しようが、テレビを見るために何か特別な知識や技術が要求されることなどはほとんどない。
このような家電製品の王様であるテレビがまるでPCのようにインタラクティブに変化するとは一体どういうことなのだろうか?はたしてその変化は必然的なことなのだろうか?一体何がどのような順序で起こるのであろうか?
誰もが毎日、当たり前のように利用しているテレビが大きく変化することによって、視聴者のライフスタイルは一体どのように変わっていくのであろうか?視聴者はどの程度その変化を快く受け入れるのであろうか?
またビジネスという視点で見た時、テレビの変化の中で既存のビジネス構造がどのように変化し、新しくどのようなビジネス機会が生まれてくるのであろうか?
これらの多数の疑問点に答えていく前にまずは“準備体操”として、「テレビがインタラクティブに変化するとは一体どういうことなのか」を3つの分かりやすい具体的な事例を通じて話を進めていこうと思う。興味深い3つの事例を通じて今後のテレビに訪れる新しい変化の胎動と雰囲気に触れることができるだろう。